国内龍学者の声

鹿児島大学での婦人科腫瘍専門医の修練を終えて

 私は、高知県で婦人科腫瘍医を目指して高知大学の産婦人科に入局しました。残念ながら高知県には婦人科腫瘍専門医が不在であり、必然的に婦人科腫瘍専門医修練施設もありませんでした。その状況の中で修練先を探していた私に小林教授がお声がけくださり、念願であった今回の修練が叶いました。高知大学が修練施設でないため鹿児島大学で2019年4月~2022年3月の3年間で修練をさせてもらいました。婦人科腫瘍専門医の修練を考えている方の参考になればと思い、私の経験を述べさせていただきます。
 1年目は開腹手術を中心としたグループで非常に多くの症例を経験しました。修練で最も症例経験が集めにくい広汎子宮全摘出術に関しては、この年の後半に連続して15例を経験させていただきました。それまでも第一助手や半分執刀などをさせて頂いた上で初めから最後まで責任もって執刀する経験は、高知に帰って責任医になる私にとって大変自信になりました。それ以外にもこの年は、開腹での広汎子宮頸部摘出術、ロボット支援の広汎子宮頸部摘出術、ロボット支援のPAN郭清など貴重な症例も経験させていただきました。
 2年目は開腹手術とロボット手術を中心に経験させていただきました。高知大学からロボット支援手術の導入を期待され、サーティフィケートも取らせてもらっていました。この1年で10例以上経験させていただきました。これは現在高知でロボット支援手術を行うにあたり病院負担なく、保険診療を開始できる条件を満たしたことになり、私自身にも高知大学病院にも大変ありがたい経験になりました。
 3年目は腹腔鏡手術が中心のチームで指導いただきました。腹腔鏡下広汎子宮全摘術や腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清などの第一助手をたくさんさせて頂きました。開腹で行っていた手術を腹腔鏡で視野を共有して手術中に指導いただき、またその動画を繰り返してみることにより、手技や解剖の知識が深まりました。また、センチネルリンパ節ナビゲーション手術の臨床研究を併用した腹腔鏡下広汎子宮全摘術の患者さんの術後回復の速さ、その後のQOLの良さに感激しました。適応をしっかりと守り、がんサバイバーのQOLを維持するこの重要性を感じました。
 3年間を通じて、JGOG、JCOG、その他企業治験や国際治験など多くの臨床研究も担当させていただきました。臨床研究を通じて婦人科癌患者さんのより良い治療を目指す姿勢を教えていただきました。
 全国講演会でもお名前を見ない月はない小林教授が外来や手術もフルでされていて、いつ休んでおられるのかと心配になるくらいでした。その多忙の中でも小林教授には週2回のカンファレンスや手術、学会発表など多くの場面で直接御指導いただきました。多くの「小林チルドレン」に仲間入りできたことは私の自慢です。
 プライベートでは小学生3人の子供と妻の5人で鹿児島に行きました。臨床では主に婦人科のみであり、プライベートの時間も充実した3年間でした。途中からはコロナもありましたが、その前には奄美大島へ旅行をしたり、近くは霧島、指宿、知覧、大隅半島など多くの観光地に週末ごとに家族で足を運び、いちご狩り、紅葉、山登り、温泉など楽しみました。焼酎や鳥刺しなど食にも恵まれた土地で家族一同帰りたくないと言うほどでした。
 私のように婦人科腫瘍専門医の修練を考えている方には、都会でしか経験できないと思っているような最先端の手術や臨床研究を経験しながら、自分に必要な手術経験も非常に多くできる施設だと思います。

高知大学 婦人科 牛若 昂志