女性ヘルスケア

 はじめに、女性ヘルスケアとは何でしょうか?
 産科婦人科学の4つ目の新しい柱として、女性医学(女性ヘルスケア)は、平成26年11月に正式にサブスペシャリティとして認定されました。女性医学とは、「女性のQOL(生活の質)の向上を目的に、女性に特有な心身にまつわる疾患を、主として予防的観点から取り扱う産婦人科の専門領域」と定義されます。
 私たちは、女性の各ライフステージ(思春期、性成熟期、更年期、老年期)にわたる健康問題を扱っています。女性特有のホルモンの変化とライフステージはとても密接な関係にあるため、様々な疾患を引き起こします。一人ひとりにあった治療や予防法を見つけ、少しでもQOLが向上するようにお手伝いをさせて頂きたいと思っています。

 それぞれのライフステージにおける疾患についてご説明します。

思春期・性成熟期

原発性無月経

 18歳になっても初経が起こらないものが原発性無月経と定義されていますが、15歳になっても初経を認めない場合はぜひご相談ください。必要時は、遺伝カウンセリングを受けて頂いた上で、染色体検査を行うこともあります。性交経験のない方は、経腹エコーで子宮・両側卵巣の検査を行いますが、経腹エコーは状況により、検査が不十分な場合があります。その場合は、ご本人と相談し、同意を得た上で経直腸エコーを行うこともあります。ご本人の気持ちを尊重しますので、経直腸エコーが難しい場合は、条件を変えるために何度か受診をしていただく場合もあります。

続発性無月経

 これまであった月経が3か月以上停止することです。原因として、体重減少性無月経、視床下部性・下垂体性無月経(下垂体腫瘍を含む)、卵巣性無月経、薬剤性無月経、甲状腺機能異常、糖尿病などがあります。
 主な治療として、ホルムストローム療法(プロゲスチンの周期的投与法)、カウフマン療法(エストロゲン+プロゲスチンの周期的投与法)、漢方療法などがあります。

日本産婦人科医会HPより抜粋

希発月経

 月経が39日以上3か月以内で来る状態であり、続発性無月経同様に原因がないかを調べます。結果により、治療を行います。

早発卵巣不全(POI)

 40歳未満の早い時期に月経が来なくなることを言います。原因として明らかとなるものは1~2割程度です。原因について調べるため、血液検査などを行います。膠原病がないか、甲状腺ホルモン値、卵巣刺激ホルモン・黄体形成ホルモン値、卵胞ホルモン値を測定します。また、遺伝カウンセリングを受けて頂いた上で染色体検査を行う場合もあります。
妊娠を希望される場合は早急に生殖グループに相談します。妊娠を希望されない場合はカウフマン療法を行います。エストロゲンが低下することにより、骨粗鬆症・心筋梗塞・脳梗塞といった病気が増加することがわかっているからです。一般的な閉経年齢まで治療を続けていきます。

月経困難症

 月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状のことで、下腹痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、抑うつなどがあります。月経困難症は、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮奇形などの器質的疾患に伴う器質性月経困難症と器質的疾患を認めない月経困難症に分けられます。診察を行い、器質的疾患がないかを調べます。器質的疾患が見つかった場合は、その疾患の治療を行います。病状により、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)、ジエノゲスト、漢方薬、レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)を選択します。

診療のフローチャート

日本産婦人科医会HPより抜粋

月経前症候群

 月経前3~10日の黄体期の間に続く精神的あるいは身体的症状で月経の発来とともに減退ないし消失するものを言います。いらいら、のぼせ、下腹部の膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着かない、憂うつの順に多いです。治療には、疾病・病態の理解・生活指導、LEP製剤や漢方療法があります。相談しながら、治療法を選択します。

更年期

 一般的に40歳を超えると、エストロゲン分泌がゆらぎ始め、様々な症状を来すことがあります。閉経の時期は人それぞれのため、いつ閉経になるかはわかりません。閉経前後5年間を更年期と呼びますが、そのホルモンのゆらぎの時期に起こる症状に対して治療を行っています。

日本産婦人科学会HPより抜粋

 ホットフラッシュや気分の落ち込み、やる気がしないなど、さまざまな症状が現れますが、他の病気に伴わないものを「更年期症状」と言います。そして、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。
治療には、ホルモン補充療法、漢方療法、補完代替治療(エクオールなど)があります。卵巣から分泌されるエストロゲンが急激に低下し、この変化が症状を来している原因であるため、ホルモン補充療法の目的は、必要最小限のエストロゲンを投与し、その変化を緩やかにすることです。エストロゲン製剤には飲み薬、張り薬、塗り薬があります。患者さんと相談しながら、最も良い治療方法を選んで行います。子宮のない方にはエストロゲン単独療法を、子宮のある方にはエストロゲン・黄体ホルモン併用療法を行います。また、定期的に子宮がん検診や乳がん検診をお勧めしています。いつまでホルモン補充療法を続けていくかは人それぞれです。相談をしながら、治療を継続するかどうかを判断していきます。

日本産婦人科学会HPより抜粋

老年期

閉経後泌尿生殖器症候群

 主な症状として、膣や外陰の不快感、膣の乾燥、灼熱感、性交痛、排尿痛、帯下(おりもの)、尿漏れ 頻尿などがあります。腟分泌検査、細胞診などを行い、腟錠や内服薬による治療を行います。

骨盤臓器脱

 主な症状として、尿漏れ、子宮下垂感、残尿感、頻尿、尿が出にくい、便が出にくいなどがあります。保存的治療として、ペッサリーという丸いリングを膣内にいれて臓器が下がってこないようにします。この方法は骨盤臓器脱を根本的に治す治療ではありません。定期的に受診をしていただき、管理をしていきます。手術を希望される場合や保存的治療での管理が難しい場合は腫瘍グループと相談して外科的治療を検討します。

全てのライフステージにおいて

骨粗鬆症

 骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症になっても痛みはありませんが、ちょっとした転倒などで骨折が起こります。骨折すると痛みだけでなく、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、QOLが著しく低下します。骨粗鬆症は圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。そのため、積極的にDEXA(デキサ)法を用いた正確な骨密度測定を行っています。DEXA法とは、微量なX線をあてて骨密度を測定する検査方法です。骨粗鬆症の診断となった方には、原因や全身の状態を調べるために血液検査などを行い、結果によって、内服薬や注射による治療を行っています。骨量減少の方にも生活指導や食事指導、定期的な検査を行っています。

鹿児島大学ヘルスケアグループの特長

手の更年期外来

 更年期に入り、手指の不調(腫れ、痛み、しびれ、動かしにくさ)が現れる方がいます。その手指の不調に着目し、整形外科医師と共に「手の更年期外来」を2019年4月から開設致しました。手の痛みは強くなると、フライパンが持てない、ペットボトルの蓋が開けられないなど、強く握ることが難しくなり、生活に支障が出てきます。手指に気になる症状がある方は早めの受診をお勧めしています。
手の更年期外来の流れをご説明します。まず、整形外科を受診していただき、整形外科医師により、手の評価(レントゲン等を含む)をしていただきます。「更年期の手の不調」と診断された方は婦人科を受診して頂きます。必要時は婦人科の診察を行った上で、薬物療法(ホルモン補充療法、漢方療法、補完代替治療(エクオールなど))を選択し、治療を行います。また、整形外科主体ではありますが、臨床研究「更年期の手の症状に対するホルモン補充療法の有用性についての検討」を行い、ご協力を頂いております。
手の更年期外来の受診を希望される方は、初診外来予約センターに連絡をして、予約を取ってください。病院の先生方から予約を取っていただく場合は、初診予約センターにFAXをよろしくお願い致します。

初診 毎週月曜日 午前 整形外科
午後 婦人科(整形外科受診終了後)

電話 医務課初診外来予約担当
電話:099-275-5168 
受付時間:月~金(9:00~7:00)、土(9:00~13:00)
但し、土曜日が祝日、年末年始(12月29日~翌年1月3日)の場合は除く。
FAX 099-275-6698

がんサバイバーのヘルスケア

 がん治療の進歩により、がん治療後の生存者数、有病者数は増加しており、生活の質(QOL)の維持・改善が重要な課題となっています。特に若年女性において手術によって外科的閉経となったり、抗癌剤治療や放射線治療によって月経が来なくなったりする(早発卵巣不全)場合があり注意が必要です。女性ホルモンの欠乏は、更年期症状やQOLの低下、その後の骨粗鬆症、心血管系疾患、代謝性疾患(糖尿病など)、認知機能など様々な臓器に影響を与えます。症状の軽減や不安の解消によってQOLの向上を目指すと同時に予防医学的観点に立った検査や治療、生活指導を行っています。具体的には治療後早期からホルモン補充療法を開始したり積極的に漢方療法や補完代替医療を検討したりしています。2020年4月より「外科的閉経後の更年期障害の特徴や様々な病態の発生に関する研究」を行い、婦人科がん治療に伴う外科的閉経が予想される患者様にご協力をいただいております。

下垂体疾患センター

 下垂体疾患の治療に当たっては、脳神経外科、糖尿病・内分泌内科、小児科、産婦人科、泌尿器科など多数の診療科の協力が不可欠です。下垂体疾患に伴って月経や妊娠に関する異常が生じる場合があります。当院には下垂体疾患センターがあり、定期的にカンファレンスを行い連携して診療を行っています。下垂体疾患センターのホームページもご参照ください。

他科の先生方からのご紹介もたくさん頂いています。

 「基礎疾患があり、以前から薬を内服している。月経困難があって薬を飲みたいが、どの治療法が良いか」、「薬の影響で月経が不順になったけれど、どうしたらよいか」など、様々な不安があるかと思います。婦人科に関わる症状で気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。基礎疾患を考慮し、その方の状態に応じて治療を行います。

さいごに……

 当科には腫瘍グループ、周産母子グループ、生殖内分泌グループ、女性ヘルスケアグループがあり、その方の状況に応じて連携して治療を行っています。他のグループで治療が必要と判断された場合には治療を行っていただきます。そして治療終了後(もしくは治療継続しながら)、女性ヘルスケアグループで管理を行うことができます。
私たちは、それぞれのライフステージにおける治療前後のリスクを把握し、予防的管理観点を含めた継続的なケアを行うことを目標としています。
気になる症状があるときは、ぜひお気軽にご相談ください。